huv a slight fever

年中夏

Mar.2018

どんどん遅くなってるけど3月のまとめです。


◆トラッシュマスターズ「埋没」
事前知識なく観劇したのですが、目頭〜と少し似ていてびっくり。南の方の方言。こちらは四国ですが、林業の話が出てきてまた既視感。あとセットの感じも。右手に低いテーブルがあるところとか。

全体を通して、あっこれ、この言葉メモしておきたい!っておもう箇所が多い。合意、優位、ハラスメント、その他にもたくさんキーになる言葉がある。そしてその殆どが、あんまり、聞いていて気持ちがいいものではない。社会問題とか人と人との問題の原因になるような要素を表したようなもの。
都会と地方(この言い方があってるかはわからん)の軋轢みたいなものって、なんでこうもどうしようもないんだろうな。私が都会コンプレックスと自認してるからか、この手の作品みるとああだこうだ語りたくなってしまう。
建設派と反対派…この問題への知見が浅いので、個人保証とか水没地域の方が優位とか、そういうのを聞いて、いちいちなるほど!とか、政治だ…!っておもった。駆け引き。感情で突き動く人、そうでない人、感情で動いているようでそうではない人、もいる。人のいろんな面を見て、疑心暗鬼になってしまう。人の思惑。知らないところで動かされていそうで嫌だ。多数派が正しいとは限らない。メディアの書きぶりと現実との乖離。
いろいろな示唆を浴びせられてる気がする。見終わったあと人間が嫌になると言うか怖くなるというか、ちゃんと常日頃からひとつひとつ考えて生きようって思わされる作品だった。

村でのやりとりを聞いていると、苦しさがあって……嘘をついたっていいし、やりたいことやればいいし、村を出たければ出ればいいじゃんと叫びたくなる。そんな簡単じゃないし、お前に義理はないのかと言われそうだけど、それが口にできるくらいの世界じゃないと私は生きられない。です。息が詰まる。みんな煮詰まっていてこわい。
でも、その上で、人の思いっていうのは踏みにじらずにいたい気持ちもなくはなくて。少子化とか過疎とか久しぶりにそういう問題に触れて、未来が暗くなる感覚がして、不安になる。でもそれも正しいのかわからなくて、ぐるぐる考えてしまう。うまくいろんな感情がつつかれて刺激された。よかった。

俳優さんのことも書きたいんだけどそれ以上に内容に言及したいことがたくさんで。でもめぐみさんがひたすらこわかったです。(ほめてる)それだけはのこしておく。2役の演じ分けがみなさんすごくて、くせもあって、濃かったです。

◆「ラカージュオフォール」
初見のミュージカル作品。ポスターを見ただけで派手で楽しげで、蓋を開けてもきらびやかで、でも明るいだけじゃない。それでも作られたステージの景色を見ているのは楽しかった。作品自体は重すぎないけれど根底にあるちょっとの切なさみたいなものは感じる。
女性のキャストさんは数名だけなのに、あの華やかさ。カジェルありきの作品、というくらい、ショーのシーンがたのしい。美しい。なんていうんだろうなあ…しなやかなしたたかさというか。ああなりたい、っておもわせてくれるのはどの部分に惹かれているんだろう。TENTHぶりの新納さんがお美しくて、コミカルで、かわいかった。かっこよかった。的確に表す言葉が見つからなくてくやしい。

ありのままの私、の一番はじめの歌詞が、すっごく好き!最高に最高でかっこいい。
ありのままに見えてすべてイリュージョン!嘘が本当!
正直に生きていたいから偽りの姿に身をやつし
ガラス玉ダイヤよりよく光るでしょう
この歌詞を書いた人、訳した人は間違いなく天才だとおもいました。ありのままでないことがありのまま。そうありたい私の具現。矛盾しているようでしていない!そのとおり!本当の私が正しいとは限らない、本当よりもっと本当の姿がある…
たのしい、しあわせな虚構は最高。舞台というものに近い性質がかんじられて、ううーん面白い…日本語に訳した歌詞のリズムもまたたのしくてよい…。

ジャンミッシェルは、アルヴァンが母親のように自分を愛してくれたから、ってだけではなくて、アルヴァンの生き方とかそういう立場の人すべてを受け入れられるといいな、とおもいました。意外とほかのカジェルとは打ち解けている感じだったので若者らしい意地もあってああいう行動だったのかもしれない。

全編通してコミカルで、軽やかでした。

◆「ジキル&ハイド」
これまた初見。次に日本でやってくれるときは絶対に見るぞ!と思っていた。念願叶った。そして、ほんとうーーに、見られてよかった…!
テーマがすごく面白いというか…社会性を持ったテーマというわけではないのかもしれないけれど、なんだろう、ぞくぞくわくわくする。善と悪。あくまで、一人の人間 の中にある善と悪。

音楽がドラマティック。まさにミュージカル!そうさせてくれたのはキャストさんの力あってだと思う。たっぷり音楽を味わいながら、ストーリーにのめり込めて、これぞ観たかったミュージカル…だった。

セットとか道具が細かくて、すごくしっかりしてたなあ…研究室の凝ったセットに、火の演出もあり、あとは血とか。
細かい結末を知らなかったので最後にハイドが蘇ったときには素直に驚いて座りながらガタってなってしまった気がします。なんだろう…臨場感とアトラクションみたいなゾクゾクがあって、内容的な掘り下げたいおもしろさもあって…見終わったあとの充実感たるや…。

石丸幹二さんは、私がここで語らなくても、その実力たるや…という感じなんだけど、葛藤、狂気、焦燥、みたいな感情表現の確かさが凄まじい。余裕のある人柄を演じるより、こう、人の負の面と感情を演じているところに惹かれます。伝わってくる。人格が変わるところは、二面性の表現がうまくて、騙されてしまいそう、と思った。本当に二人の人物みたい。

宮澤エマさん…歌声が、天使というか、空気に溶けていくようで!ジキルに対するチャーミングな言い回しには純粋さと幼さがあり、ちょっと背伸びした感じもある一方、すべてを受け入れる懐の深さとあたたかさもあり、すばらしかったです。
声を物質で表現すると、水、かなあ…とおもったりした。ふわふわしてるけどみずみずしくて、クリアで。素敵だった…。特にソロが良かった。ストレスフリーというかね…。しみじみよくて、ため息。

笹本玲奈さんは今回の役がとても意外だったんです。というのも、サイゴンのキムでしか見たことがなかったため。全く別のカラーの役だったけど、とても魅力的!印象ががらっと変わりました。
ルーシーの強さ、弱さ両方の色と、悲しさ、喜び、絶望感、やるせなさみたいなもの、いろんな面を持つ女性。そう、女性としての魅力と美しさがあって、とてもよかった。

ある意味対局のように描かれる女性が、私にとってはどちらも魅力的で、どちらにも感情移入できて、とってもとってもよかった!とにかくストーリーのままに身を任せて楽しめました。どっちかの立場に味方したくなりがちなので…。両方の良さが引き立てあっていたというか…とにかく満足した。2倍楽しかった感覚。

そして最後に田代万里生さん〜!!!素敵な役でした。茶目っ気とかっこよさが両方あってずるかった。メガネと顎髭がよい。明るいひだまりのような役がお似合いだなあと思いました。素敵だ〜…魅力的だ…。

素敵と魅力的しかいってない。もっといろんな人のジキルとハイドがみたいです。過去のキャストさんもまた違った色で素敵だったんだろうな。

◆「メリー・ポピンズ
プレビューを観劇。不思議な体験をした感覚で、自分の中で新しかった!とにかくたのしくって、のせられて、意外と泣けて、しあわせな余韻に浸れました。なんだか春ってかんじがする。

まず不思議だったのが、私自身メリー・ポピンズについての知識もストーリーもほぼ未知なのに、音楽だけはほぼ全部知ってる…!ってなったこと。まるで前世の記憶のよう…というのも、おそらくディズニーランドでたくさん使われてるからだとおもう。スパカリとチムチムチェリーはタイトルも知ってたけど、他ももれなく聞いたことがある。ので、予習しなくても音楽が楽しい。
柿澤バートが、人間的魅力爆発してて、どうしようかとおもった。バートという人物がまず不思議というか、つかめないキャラクターに感じたのだけど、それを不確かな存在でなく目の前に顕現させてけれるような…?自分でも何言ってるのかわからないけど、不思議な魅力に溢れた役でした。

なぜか見終わったあとにピーターパンも見なきゃ…となりました。しかけがたくさんあって飛び出す絵本みたいでたのしかったなあ。もう一回見られるかな…別キャストでも見たい。

ミュージカルが充実過ぎた3月。もっといろんな作品を見たいなあ。とおもいます。