huv a slight fever

年中夏

Aug.2018

◆宝塚BOYS チームSEA
書き出しに悩むことはめったにないのだけど、この作品は、なんと言ったらいいかわからない。書くのが難しい。ただ幕が下りた頃グシャグシャになったハンカチ手の中にあった。なぜかはっきり明確な理由がわからないけどレビューでぼろぼろに泣いていた。一番近いのはしんどいという感覚かもしれない。私がそう感じた理由はこの舞台の終わり方にあって、結局みんなで大劇場に立つことはできなかった彼らだけど、それがまるで叶ったみたいな幻のようなレビューが待っているから。レビューで彼らが輝けば輝くほど、それがたどり着かなかった夢であるということがはっきり意識されるようでつらい。現実と夢の差を感じてしんどい。最後にはそれぞれが舞台から去る。思い思いに、大階段をみつめたり、地面をみつめて泣いたりしながら。叶えたかった夢をきらきらに演じている彼らを、自分がどういう気持ちで見ているのかもわからなくなった。
彼らの努力が足りなかったからとかそういうのではなく、ひとりひとりに秘めた熱い思いがあっても叶わないことだった。ただの事実として。私は宝塚に詳しくはないけれど、ずっとそうやって続いているんだろうな。それが悪いとかそういうんではなくて。

たとえ叶わなくても彼らの姿は私の目に記憶にとても印象的に残りました。
舞台に立ちたいと強く願ってそれを実現させて舞台に立つ人はやっぱりすごく美しい。憧れとか夢とか。
それに加えて戦後という状況でそれぞれの家族との関係とか、宝塚やショーや自分の人生に対する思いがあって、特に竹内の兄と母のエピソードとかもうだめでした。あれは悲しくて泣いてしまうしレビューでも触れてくるから泣いてしまった。
途中で出てくる宝塚に関しての言葉の中で、舞台をみて腹は膨れないけどそれでも人は娯楽を求める、という感じの言葉(曖昧でごめんなさい)あらゆる人に聞いてほしい言葉でした。それがわかるから私も劇場に足を運ぶ一人です。
キャストの方にも全部触れたいくらいなんですがすごい豪華…これは見にいくよね。良知さんは私の中でお芝居の人、です。歌とかダンスとかそういう技術ももちろん素晴らしいんだけど、すごく心を揺さぶるお芝居をされる方です。というのがあらためて感じました…。東山さんは星野そのものすぎた。おばちゃんへの物腰とかキラースマイルとか。そしてダンサーとしての佇まいが美しくてぴったりとしか。藤岡さんが歌の力で殴ってくるのではなくキャラの濃さで殴ってくるのも衝撃でおもしろかったな。レビューのところだけお歌のうまさが滲んじゃっててまたはやく他の作品も見たいなーとか。
素敵なキャストさんを見て満足する半面、SKYを見るのが俄然楽しみになりました。だってまた全然違うことを感じられそうだから。終戦記念日に観劇することになりましたので心して。

◆ホチキスボイルド「ケルベロス
不思議な空間の使い方だったなあ。とはいえ正面から見たので普通っちゃ普通のお席で見やすかったのですが。すご笑った。いつもか。いきなりハチクロでわらっちゃったもんなあ。就活あるあるとか。こういう、誰でもクスッとくる笑いってどうやっておもいつくの…?といつもおもう。敵対してたキャラがなんやかんやでツーカー組む展開熱いんだよなあ…そんなの好きじゃん…ってなりました。あとね、スーツを着こなせる人材は貴重。オフィスなお芝居もっと見たい!自分の現実が楽しくなるので。

◆宝塚BOYS チームSKY
みてきましたよ〜。キャストが違えば感想も違う。あたりまえか。
冒頭の玉音放送から、観劇した日が観劇した日だけに身が引き締まった、とも違うけど、なんとも言えない気持ちになりました。今元気な体で何不自由なく観劇ということを楽しめているこの現代との対比。通信兵だったという知識を得てから見ると、なるほどな…と思った。
やはりキャストの年齢が若いと、先生方とのやりとりがしっくりくるなあと思わずにはいられなかった。最後に肩組みながら歌うところとか気持ちが入りすぎちゃって、すごくのめり込めた感がありました。
永田くんはこんなお芝居もするんだなあと新鮮だった。なにしろはじめのシーンから飛ばしてるキャラだからな…あんな高い声だったっけ?!と思いつつ、静かなトーンに落としたときにたしかに永田くんの声だ!と感じて、振り幅すごいなあと。きらっきらで愉快な大田川そのまんまの塩田さんも好きだった。

芸名はキャストが考えて決めるってことはどこかのインタビューを読んで知っていたのですが、最後のレビューの1言みたいなところも変わるのね?!それにびっくりしました。無条件に悲しくて泣いてしまう言葉が来てしまいそうで構えていたのですがそうじゃなかったので拍子抜けした。海もだけど空の方のレビューは本当に夢がかなった!みたいな感じがして、夢っぽさが増して終わった落差もすごかった。泣いてしまうな…。
名前の決め方とか、最後のレビューの紹介文で、その人が役に対してどう考えてるとか持ってるイメージがわかるってことだよなあ…それってすごく面白いなっておもう。わらわせたいようという名前、すてきすぎ。
また違う機会で再演するとしたらぜひまたみたいです。その前に私は一度宝塚歌劇というものを見るべきでは…?